真空断熱材は普及しない?
こんにちは。
今日もご覧いただきありがとうございます。
株式会社MXエンジニアリングの湊です。
さて、今日も工務店を元気にする記事を書いていきたいと思います。
《《《2021年10月17日の湊洋一のブログ第93号》
真空断熱材は夢の断熱材?
先日の下記のブログでも少し触れたのですが、先日お電話をいただいた工務店さんから久しぶりに話を聞いたので、改めてまともに書いてみます。
というのは、NEDOのサイトをちょっと観たことからもあるのです。
この記事は、NEDOの記事です。NEDOは、政府の機関で、正式名称は『国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発研究機構』といいます。
真空断熱材が住宅の省エネにも貢献
https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201003panasonic/index.html
この記事は2010年とおよそ10年前にパナソニックの記事を掲載している物です。
現在では、このパナソニックの真空断熱材は、LIXILのココエコという商品にはいっています。
で、元々のボードを作っているのは、アキレスさんだったと思います。
このLIXILのココエコ以外に、旭ファイバーガラスが比較的大きな規模で真空断熱材を扱っています。
当社も扱ってはいますが、最近はサプライヤーが高い価格を出して来ているのでちょっと市場が全くないと思っています。
真空断熱材の用途
現在の生産メーカーは、こんな感じです。
パナソニック、日立、東芝、三菱などの家電メーカーが中心です。
これは、家庭用の冷蔵庫、エコキュートなどの用途が現在の真空断熱材の用途になります。
実際に、家庭用の冷蔵庫の庫内が大きくなったり、エコキュートがコンパクトで軽くなった影に、真空断熱材の性能UPがありました。
社内データなので、表に出てくることは決してありませんが、真空断熱材を生産する元機械メーカーの社長によると、熱伝導率が0.001w/mKを超えるような試作も完成しているそうです。
真空度を上げれば、上げるほど高性能になるということが変わっています。
このデータは、24kグラウスールの0.034w/mKの34倍の性能です。
つまり1cmの真空断熱材が、34cmの24kグラウスールと同じ性能ということになりますう。
当社も建材試験センターのデータで、0.0027w/mKというデータを持っています。
ちょっとした事なのですが、真空断熱材の性能に関してはとんでもない高さだということが解ります。
これは、ものすごい将来性があるのでは無いか?という思いが7~8年前には感じられました。
真空断熱材の弱点
そんな真空断熱材にも弱点があります。それも致命的なものが3つもあるのです。
真空断熱材の弱点1. 価格
真空にするプロセスが自動化できないので、どうしてもかなり高い価格が最大のネックです。
当社は平米3000円台後半で購入できていた時期があります。それを4200円ぐらい売っていたわけです。それだと工場は利益が全く取れませんし、当社も1割ぐらいしか儲かりません。一般的には平米1万円前後が流通価格だと思います。
それが、この10年下がっていません。普及に伴って価格が下がることを期待しましたが、そもそも普及しなかったのは次の弱点が影響していると考えられます。
真空断熱材の弱点2. サイズ
真空断熱材のほとんどは、芯材がグラウスールです。これがシリカという粉体も使うようですが、シリカは価格が高いのと、湿度の問題があって品質の安定が難しいのです。
何れにしても、そもそも断熱性能は決していい物ではありません。
それをフイルムで包んで真空に引いてあるから、これほどの高性能が発揮されているわけです。
ですから。真空断熱材は必ず決められた寸法に作らないといけません。
真空度が下がってくると性能が一般的グラウスールと同等の1/10程度の性のまでさがるのです。
これでは、ビスや釘が多い建築現場では全く使い物になりません。
また、サイズもジャストサイズでできません。一応、袋は狙ったサイズで作るのですが、真空に引いていく課程でグラウスールが曲がることがあるのです。柔らかい素材なのでコントロールできない部分がどうしてもあるわけです。
真空断熱材の弱点3. 寿命
更に、この真空度が性能に関わる部分が致命的な問題を生んでいます。
これは性能が経年劣化するという問題です。
データは今は手元にないのですが、国土交通省と経済産業省が実際にJIS化に動いていた時期があるのですが、その時に10年程度で3割以上劣化するというのです。サンプルによっては1/2になってしまう物があって、寿命が安定しないというのも大きな問題です。
フロンの風船をディズニーランドなどで買ってくると3日もするとフロンが抜けて、プカプカ浮いているのが、どんどん落ちてきますが、あの現象が真空断熱材の中で起こるわけです。
もちろん、フイルムもコストもバリア性能のかなり上げているので、それでも真空度は10年もすると下がってしまいます。
ということで、家庭用の冷蔵庫、エコキュートのように15年程度で買い換える物ならともかく、住宅は最低でも50年ぐらいの性能が保てる保証が無いとなかなか使いにくいものですよね。
なので、リフォームなら有りかな?とは思います。
新築住宅には、このような理由から余り向かないのでは無いかなと思うのです。
この寿命という弱点を具体的に知ったのは、コロナが流行ってからになるのですが、今後はリフォーム用途に活用されれば良いなと思います。
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