経営コンサルタントの頭の中 59

住宅会社の大きな穴

皆さんも感じておられると思いますが、エコ住宅への注目が集まっていますね。

先日も、日本ビルダース(旧・住宅経営)の先代社長を務められた、モリシタアットホームのモデルハウスを拝見する機会がありました。

森下社長は、以前は『安くて良い家を作る会』を運営されていたことからも解るとおり、ローコスト住宅の先駆けでした。年間受注棟数を40棟。50棟と伸ばされて、とにかく受注を増やす事に注力されていました。

その後、日本ビルダースの社長を降りられて、現在は工務店経営に専念されています。

そして、今回のモデルハウスは、松尾設計室の松尾和也先生がデザインされた住宅でした。

敷地に合わせて、松尾先生がプランニングされた住宅をそっくり建てたのは、森下社長としては初めての住宅ということです。

もっとも、すでに個別コンサルを受けられて、2年以上が経過しているということで、建てている住宅はローコストではなく、大手ハウスメーカー並みの商品で、かつ松尾流のパッシブ設計の家をお手頃価格で提供することになっていました。

当然ですが、ローコスト住宅は、商品そのものはなるべく安く、なるべくおしゃれに建てて、後は価格勝負になります。大手の分譲会社にはなかなかコストでは、勝てないので、デザインと仕様で

勝負するというスタイルが今勝てる方法ですね。

ですが、それだと当然ですが大手ハウスメーカーにステータスで負けて、価格ではスーパーローコストや分譲会社に価格で負けてしまいます。

そうして、中途半端になって、人間関係をしっかり構築できないと、上と下に挟まれて負けてしまうということになりかねません。

特に、僕が慣れ親しんだ、ローコスト住宅出身の工務店様はデザイン力などで苦労されています。お客様がこれだ!という商品がなかなか無いわけです。

大手ハウスメーカーも中途半端な性能で苦戦していますが、飯田グループは全棟ZEH化をすすめていますので、我々工務店はよほどかっこいいか?それとも。大手を超える性能を獲得できないとちょっと厳しくなってきているのではないかな?と思うのです。

説明力で勝つ

そんな中、森下社長がおっしゃっていたのは、丁寧な説明と接客に加えて、商品力で勝つという形での戦略です。

一般的に設計事務所がプランしてくれるモデルハウスは、当然ですが非常に多くの見所があります。階段、寝室ひとつ持っても、多数の説明ポイントがあります。

私が丁度伺ったときには、松尾先生ご自身で今回の建物を案内していただいたのですが、設計者のこだわりを存分に聞かせていただきました。正直なところ、これまで見た住宅とはまったくディテールから違っていました。

おしゃれな家を沢山拝見しましたが、ここまで細かくこだわって設計されているとは思っていませんでした。

この説明を毎回当事者にお願いするわけではありませんが、建物全体を案内するのに90分程度じっくりかけるほど、見所のある住宅は、普通の工務店ではなかなか建てることはできません。

森下社長は、どこにお客様が惹かれるか解らないので、とにかくしっかり丁寧に説明することにこだわっているとおっしゃっていました。

家づくりは、こだわりの宝庫

本来の家づくりはこだわりの宝庫のはずです。ドアひとつとっても、なんでこのドアなのか?をしっかり説明できるはずなんですね。

ですが、多くの工務店様でそこまでのこだわりは感じられません。

これから少子化が進んで、建物が減っていきます。当然ですが、お客様の数も減ってきていますし、低所得層は新築が難しくなっています。

低所得層は分譲か中古になって、注文住宅は年収500万円以上のお客様だけになったときに、生き残っていくためには、ドア1枚。階段ひとつに5分以上か建てる商品にすべきなのかもしれないなと思いました。

それでいて、断熱も、耐震もしっかりしている。という本格家づくりの時代がまたやってくるのかもしれません。

そうすると客層はすっかり変わってしまいます。いわゆるマイルドヤンキー層は、森下社長のお客様からは居なくなってしまったと言うことです。自然と、お客様が淘汰されてしまうような家づくりもひとつの道かなと少し考えさせられました。

Posted by 湊 洋一