熱容量から木質系断熱材を考える

こんにちは。

今日もご覧いただきありがとうございます。

株式会社MXエンジニアリングの湊です。

さて、今日も工務店を元気にする記事を書いていきたいと思います。

《《《2021年9月8日の断熱ブログ第64号》》》

熱容量って知っていますか?

断熱、冷暖房などをどんどん突き詰めていくと出てくるのがこの用語です。

熱容量

これは、その物質の温度を1度上げるのに、どのぐらいの熱量(エネルギー)が必要か?という値を指します。

エネルギーは、ここではジュール(J)で示します。

(ジュールは、ワットに換算するときにはこうやって換算します。J=wxsつまり、1ジュールは1ワットの電気を1秒間流すときに発生するエネルギーです。)

比熱ではないか?という方もいらっしゃいます。比熱も似た様な言葉ですよね。

比熱はその物体の重量あたりの暖めやすさ、冷めやすさを指します

なので、似ているんですが式に直すとこうなります。

熱容量C(単位 J/K)= 物質の質量m(g) x 比熱(J/gK)

なので、物質の熱容量を語るためには、比熱とその重量が解れば良いということになりますね。

どうして熱容量が大きいと良いのか?

熱容量が大きいということは、暖めるのに大きなエネルギーが必要で、更に冷ますのにも大きなエネルギーが必要になります

つまり、暖房などで暖めた空気が熱容量の大きな壁で囲んでおくと冷めにくいという特性があるということになるわけです。

ですので、一部断熱性能に特化した工務店さんに行くと、当社の断熱材は熱容量が大きいのでとか、いう話が出てくることがあります。

では、その工務店さんが、この基本的な式をご存知か?といえば半々でしょうかね。受け売りな場合もあるかもしれません。

よく、木質系断熱材は熱容量が大きいとおっしゃる工務店の社長さんがいらっしゃいますが、ここから計算する数字などをご存知でいっているんだろうかと思うわけです。

この話は、熱エネルギーなので、保存の法則が成り立ちます。核爆発でも起こさない限り、基本はこうなります。

冬の場合:

建物への投入エネルギー(暖房、人体、照明、調理器具などからの生活廃熱)+元々建物に有ったエネルギー=建物から逃げていくエネルギー

これがバランスするというわけです。

今回の熱容量を上げるという話は、この元々建物に有ったエネルギーを大きくしようというものです。

当然、夏の場合は、熱容量が大きいと、室温が上がりにくくなる効果が期待できますね。

でも、ですよ。

この元々有ったエネルギーというのは、無から有を生み出すというのではなくて、冬の場合は投入エネルギーの一部を壁などに蓄えるわけです。

つまり、床下のコンクリートが露出している床下エアコンなどは、床のスラブ(コンクリート部分)にエアコンの熱が喰われるので、暖房いれてもなかなか暖まらないクレームが発生することがあります。これが熱容量の大きな物質にエネルギーが吸収される現象になります。

ですので、熱容量が大きいということは、応答スピードが遅くなる暖房器具みたいになったりするということを意味します。

材料による比熱の違い

比熱の基本的な考え方は、空気に比べて何倍という考え方です。ただ、空気も湿度や温度によって比熱が変化します。ここでは、空気=比熱1として考えいます。

地球上で身近に手に入るもので比熱のが大きいものは水です。数値は4以上有ります。

つまり、空気の4倍も暖めにくく、冷めにくい物体です。

氷にすると数値は半分になります。これは、液体は大きく、固体は小さくなるという傾向から来ています。

つまり、重量あたりで熱を蓄える量が最も大きい物質は水ということになります。

次に大きいものは、木材ですが樹種によっても、含水量によっても異なります。ここでは、おおよそ1.2~1.8程ですので、1.4ということであくまで代表値とします。

次に大きなものはコンクリートで、これも含水量などによりますが、1前後です。

建築材料において、これ以外は全て1以下で空気に比べて、熱しやすく冷めやすい材料ということになります。あくまで参考値を下記に載せておきますね。

比熱 参考値

このことから木質系断熱材は熱を蓄えるのか考える

木質系断熱材、1立米あたりの60kg程度です。株式会社木の繊維が公表している比熱は、下記の通りです。

https://tenomonogatari.jp/work/woodfiber/

比熱 2.1(J/g・K)=(kJ/kg・K)

そして、実際のグラフなどが色々載っています。彼らのデータによると木質繊維は高い温調効果があるようですね。

これらのデータから熱容量を計算してみます。

比熱が公表値の2.1として、壁面が150平米で、100ミリ厚で入っていたとすると壁全体の重量は、15立米です。木の繊維は1立米60kgなので900kgぐらいの重量でしょう。

熱容量は、900kg x 2.1(J/gK)=1890(J/Kg)となります。

グラウスールで考えると、壁で15立米として、16kg高性能のタイプで、240kg程度の重量です。比熱はメーカのWEBにはデータが載っていないので、WEBで参考値を探しました。0.81~0.87(J/gK)程度とのことです。

熱容量は、240Kg x 0.81(J/gK) = 184(kJ/K)となって、木の繊維の1/10しか熱容量がありません。

なるほど、木の繊維の温調効果の原因はこれでしょう。

では、その温調効果を出すのに水だとどのぐらい必要なのか計算してみます。

熱容量の差分の1890―184=1,706 (kJ/K)を水で補うとすれば、まずは4.2(J/gK)の比熱があるので、4.2で割ると約400kgぐらいの水があると良いということになります。

2リットルのペットボトルにすれば、200本分ですね。

つまり、200本のペットボトルを床下に置いておくと、基礎断熱の建物の場合は、木質繊維の建物と同等程度の熱容量を持つということになりますね。

とてもくだらない思考実験でしたが、こうやって計算して、同等性能出していくというのは何をどうすれば良いか?ご理解いただけます。グラウスール+ペットボトルで木質繊維と同等のことができるのか、誰か実証実験して貰えないでしょうか。

個人的にはとても面白いのでまた計算問題はやってみたいと思います。

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Posted by 湊 洋一