基礎断熱ってどこまで断熱をすればいいの?
こんにちは。
MX代表のみなとです。
今日も、毎日のブログを書いていきます。
工務店の皆さんの力になったら良いなと思って書いています。
《《《2022年12月24日 エコ住宅をつくる中小工務店のためのブログ第62号》》》
床下エアコンを始めると必ず疑問を抱く事があります。
それは、基礎断熱についての疑問です。
基礎断熱ってどこまで断熱をすればいいの?
この問題です。これに数字を使ってきちんと答えられる人はいません。
実は、先日大阪で工務店さんと同行で、施主のお宅にお邪魔して、断熱の話をしているときに、よく勉強されているご施主様に『基礎断熱は外周部分だけではなく、全面断熱すべきでは?』
と言われました。その時は、以前から聞いている基礎中央部は断熱しても効果が薄いんですとお伝えしたのですが、『どう効果が薄いのでしょうか?』と言われまして答えに困りました。
松尾設計室の松尾先生に聞いてみたら、こう答えられました。
基礎の中央部を断熱しても、コストに見合う効果が得られないので現在はやっていない。
松尾先生の場合は、きちんと計算して、確認されているのですが、その計算結果は公開されていません。
ということで、切り札を使いました。
東大の前先生にデータがないか質問したのです。少し時間がかかりましたが、たまたま、東京理科大の修士課程の方が同じテーマでシミュレーションをされていたのでそのデータをいただきました。
前提条件として、住宅の中央部に暖気を吹き込みます。
床下エアコンみたいな形ではなく、建物のど真ん中に暖気を落とす設定です。
その方がシミュレーションしやすいんだと思います。暖気の吹き込む場所は、結果に大きな影響を与えないと僕は考えます。
建物の中央部と外周部
基礎断熱の場合は、断熱箇所は3つのパートに別れます。
立ち上がり部分、外周部分、そして中央部分です。
今回のシミュレーションでは、立ち上がり部分、外周部1メートルと、その他の中央部分に分けてシミュレーションしてあります。
この外周1メートルと中央部分の面積は27.2平米で全く同じです。だから600ミリとかではなく、1メートルにしたのだと思います。
そして、それぞれの部分の影響を断熱材の厚さを変えて計算してあります。
断熱材は、一般的なXPS(押出法ポリスチレンフォーム)です。熱伝導率は、0.028w/mKですからJIS値でしょうか。
立ち上がりの壁は、断熱材50ミリと100ミリ
底盤部分は外周部1メートルと中央部ともに、なし、50ミリ、100ミリでのシミュレーションです。
パターンとしては2x3x3となって18通りですが、立ち上がりがなしの時は、検討しません。
立ち上がりが50ミリの時は外周部が50ミリ、100ミリの2パターンで、かつ外周部は中央部より薄くなることは避けます。
ということで、シミュレーションパターンは全部で12パターンでのシミュレーションです。
数字がマイナスになっているのは、それぞれの部位から逃げる熱量なっているからです。
基礎壁は、基礎の立ち上がり。外周部は1メートル、中央部はその他に場所になります。
場合分けでの細かい数字よりも、我々は基礎断熱の中央部分の断熱ありなしで、どのぐらいさが出来るのか?を知りたいわけです。
結論から言えば、外周部1メートルの断熱材の影響に対して、中央部の影響はこんな感じになりました。
立ち上がり50ミリ、外周部50ミリ -134kwh/月、中心部50ミリ -29kwh/月
立ち上がり50ミリ、外周部100ミリ -98kwh/月、中心部100ミリ -24kwh/月
立ち上がり50ミリ、外周部50ミリ -133khw/月、中心部なし -46kwh/月
立ち上がり100ミリ、外周部50ミリ -135khw/月、中心部50ミリ -30kwh/月
立ち上がり100ミリ、外周部100ミリ -99kwh/月、中心部100ミリ -24kwh/月
立ち上がり100ミリ、外周部50ミリ -135khw/月、中心部なし -47kwh/月
中央部と外周部が同じ厚さの場合は、中央部から逃げる熱量はいずれにしても外周部の1/4程度になっています。
つまり、中央部は外周部に比べて影響度は1/4前後で影響度合いはかなりちいさいということです。
そして、中央部に断熱がある場合と、ない場合を比較すると、ない場合は中央部のエネルギーの漏れは17~24kwh/月程度増えていますが、全体のエネルギー漏れに対して10%前後です。
ということで、同じ面積でも外周分の方が、中央部に比べて4倍影響が大きい。更に、中央部の断熱のありなしは、基礎全体のエネルギー漏れに対して10%程度しか影響がない。ということは、中央部の断熱がなされていないのは、やはり合理的なんだなと思うのです。
一般的な施工は、外周部が精々900ミリです。下手をすると450ミリの場合もあると思いますが、基本的には傾向は変わらないと思います。
とにかくこれからは、自信を持ってこの質問に答えられます。
前先生には転載のご許可をいただきました。出典を明らかにすれば良いとのことですので、ここに公開させてもらいました。
前先生、東京理科大学 修士2年の石倉侃介さん、ありがとうございます。
これはデータをまとめるのに膨大なシミュレーションを回す必要があるので、学会発表レベルの内容なのです。
そこも含めて感謝しております。
ですが、シミュレーションですから、実測データとの差異はあると思いますし、条件によっては結果が変わるのは仕方ありません。
工務店の皆さんにおかれては、あくまでも傾向を見る資料だと思って使っていただければ良いと思います。全文そのまま掲載しても、多分きちんと理解できないなと思いながら僕の方での解説を加えさせてもらいました。
論文そのものは我々は手に入らないのですが、論文のレジュメは結構落ちているので、マニアックな方のためにまた、論文解説をやってみたいと思います。僕は電気工学科出身で、建築に関しては素人的な視点で見られるので興味深いですね。
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